No Funの先輩のラモさんが最近やたらとサウナにハマっている。俺の身体には地元岡山の後輩のシンイチローの彫ったタトゥーが増えてきたから家から2分のスーパー銭湯には行けなくなった。何かを手に入れると何かに拒絶されるのが世の常らしい。
タトゥーを増やした左腕が痒い、少し赤くなってる。俺の体も立派に拒絶しててウケる、自分で決めた事なのに。ボラギノールが効くらしいけど、ボラギノールをレジに持って行くのは訳のわからんプライドのせいで出来ない。「自分、痔じゃないですよ」って顔が上手くなったら買いに行こう。
人は初めての経験が生きるほどに減るもんだから歳を重ねるごとに1年が短く感じるんだと何かで読んだことがある。俺は今年も来年もその先も長い1年を繰り返したい。長い一年を呼吸も忘れるくらいに生き抜きたい。
去年は夢だった自分の城「青い心」をオープン、今年はNo Funに加入してトロンボーンを始めた。細かいことを言ったらもっともっとあるけれど、初めてのことばかりだ。
自転車に初めて乗れるようになった日のことを君は覚えているかい?どこにでも行けるような気がしなかったかい?あのワクワクと自由と無限の可能性を最後に感じたのはいつだ?
きっとその感覚が俺を君をどこまでも連れて行ってくれるんだと思う。まぁでも、チャリンコで行けるのは隣町が相場だし少なくとも海は渡れない。それに気づくとモチベーションは消えて熱は冷めるんだろう。
でも俺は知っている。日本語で叫ぶライヴで頭を振る外国人や自転車で県を跨いで仲間の結婚式に赴く先輩を。とっくに無理だと決めつけていたことを可能にしている連中がいる。
「限界をテメェで決めるな」みたいな少年漫画よろしくな事を言うつもりは一切ない。でも、誰かにできて俺や君にできないわけはないとは思う。
プロバスケ選手にジャーナリスト、本音だけを歌えるメジャーミュージシャン。俺は諦めた夢を数えたらキリがない。でも確実にいろんな夢を叶えてきた。ストイックな姿や、等身大の苦悩や葛藤、乗り越えてきたから言える言葉。下がりまくったモチベーションと冷めかけた熱とで消えかけの篝火に仲間が薪を焚べてくれたから、それで照らしてきた。
今何をやってるかも分からない学生時代のツレや数少ない幼馴染とかとまた会える気がする、この生き方で。何かを手にするために手放したものを今度は無くさないようにできる、拒絶していたのはどっちか本当は分かる。
「早く自慢させてやるからな」への返信が「ずっとしとるわ」だった。
もうちょっとだけ自分を褒めてみようと思う。
相棒は連日ライヴに臨んでいる。何かを俺たちで掴めそうな感覚。どこまでも行こう。窓の外は台風がご機嫌だ、機材大丈夫か?アイツら。
好きな音を出せる場所は不意に消えちまう事を学んだ。でも音が鳴り止まないのはきっとそれに依存しないからだ。
悲しみや怒りは先人達に任せて、俺は振り返らずに動き続けるのが使命に感じる。
俺と仲間は今日も薪を焚べる。
幸運にもこの街には沢山銭湯がある。入れたてのタトゥーが落ち着いたら行きたいな。早く行きたいな。
これ、痔になっちまえばいいんじゃねぇか?そしたらボラギノールを肛門とタトゥーの2WAYで使えるぞ。肛門とタトゥーの二刀流?最悪の大谷翔平?あーあ、折角の銭湯へのモチベーション下がっちゃた。おい、早く俺に薪を焚べろ。